甲子きね)” の例文
此上甲子きね太郎のあごを取つたところで、大した收獲がありさうもないと見ると、平次は番頭の吉兵衞を呼んで、家中を案内させました。
お内儀は遠慮して遠のきましたが、その耳には、内儀のもとの夫、お藏前の右馬吉うまきちや、龜井町の甲子きね屋六兵衞の名が敏感に響きます。
番頭も手代も伜の甲子きね太郎も居りました。朝の光の中にさらされたお茂與の淺ましい死骸を前に、平次は靜かに續けるのです。
ガラツ八は平次の説明にすつかり壓倒されましたが、それよりも驚いたのは、番頭手代、伜の甲子きね太郎などでした。
「龜井町の甲子きね屋六兵衞かな。同業で、隣り町で、お互ひに意地つ張りだから」
「酒も飯も間違ひなく出してやるが、それより、甲子きね屋六兵衞はどうしたんだ」