狃染なじみ)” の例文
六個月程経って、R市から百マイルばかり距たった大都市の遊廓で、古い狃染なじみの女と遊興中、同市の敏腕な刑事に怪しまれて逮捕されたものであった。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
剥げた八寸膳の上に薄汚ない茶碗が七ツ八ツ……それでも夏は海から吹き通しだし、冬の日向きがよかったので、街道通いの行商人なぞがスッカリ狃染なじみになっていた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私はあの蔵元屋の台所ならモウ二十年以来このかたの古狃染なじみで御座いますが……毎日お余りを貰いに参りますので……さもしい事を申上るようで御座いますが、蔵元屋の前の御寮ごりょんさんの時は
「ハイ。狃染なじみの芸者が風邪を引いているのを過って盛り殺した奴で……」
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)