澗底かんてい)” の例文
あたかも六月の下旬で、窓に倚って眺めると、澗底かんていの樹木は鬱蒼と新緑をたたみ、前面の峭崖しょうがいから数条の小滝が落ち、その下に湧涌ゆうようたる水声がある。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
菜の花、豆の花ならば戯るるすべもあろう。偃蹇えんけんとして澗底かんていうそぶく松がには舞い寄る路のとてもなければ、白き胡蝶こちょうは薄き翼を収めて身動きもせぬ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)