漲溢ちょういつ)” の例文
見て居るうちに大井川奥の強い力ある山の呼吸が、石炭の煙や汽笛の響に濁り切った都会の空気に漲溢ちょういつして、懐しい山肌の匂が体に滲み込んで来るように思われる。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
漲溢ちょういつせる光明である。あけぼのの光に対抗し得る蝙蝠こうもりは一つもない。どん底から社会を照らすべきである。
性格はきしり揺らいでいた。他人の眼には、その地震は、その内部の大漲溢ちょういつは、少しも見えなかった。クリストフ自身にも、意欲し創造し生存するの力がないことだけしか、見えなかった。
時とするとパリーの下水道は、あたかも軽視されたナイル川が突然憤ることがあるように、氾濫はんらんの念を起こすことがあった。きたならしいことではあるが、実際下水道の漲溢ちょういつが幾度も起こった。