涸沢からさわ)” の例文
旧字:涸澤
自分たちの仲間では、この涸沢からさわ岩小屋いわこやが大好きだった。こんなに高くて気持のいい場所は、あんまりほかにはないようだ。
ぐられたとこが多い、「今夜の泊まりはあすこだ」と霧のもつれ合っている間から、涸沢からさわの谷底を眼の下に見て、嘉代吉が指さす、その霧のぴしゃぴしゃささやぐ間を
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
むかしスペイン人の典獄が住んでいた官舎デスパチョ、将校宿舎、将校集会所、附属炊事場などのある平濶な丘へつづき、一方は岩肌に電光形に型付した小径を降り、広い涸沢からさわをひかえた谷底の
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
涸沢からさわ岳(北穂高岳)、東穂高岳などの穂高群峰を、尾根伝いに走って、小槍ヶ岳(新称)、槍の大喰岳を登り、槍ヶ岳から蒲田谷へ下りて、硫烟のさまよう焼岳を雨もよいの中に越え
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
石ばかりの涸沢からさわを行くと、蒼黒い針葉樹に交って、白樺の葉が、軟らかに絵日傘に当るような、黄色い光を受けて、ただ四月頃の初々しい春の感じが、森の空気にただよっている、その若葉がくれに
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)