浪々なみなみ)” の例文
なるほど、けさうちを出るとき寝台の横に脱ぎすてて行った私の代りの靴が、片っぽだけ浪々なみなみと水をたたえている。
茶の間では細君がくすくす笑いながら、京焼の安茶碗に番茶を浪々なみなみいで、アンチモニーの茶托ちゃたくの上へ載せて
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
津田君が三十匁の出殻でがら浪々なみなみこの安茶碗についでくれた時余は何となくいやな心持がして飲む気がしなくなった。茶碗の底を見ると狩野法眼かのうほうげん元信流もとのぶりゅうの馬が勢よくねている。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)