残肴ざんこう)” の例文
三人が通ったのは、往来に向いた二階の広座敷であったが、前の客の残肴ざんこうやら鼻紙などが、まだきもせず散らかっている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御奉納も豊かである。何を苦しんで深夜を選んで台所口へ残肴ざんこうを漁りに出かける必要があろう。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だれかの食い残したさらが見つかると、そこへゆうゆうとすわり込んで、残肴ざんこうをきれいに食ってしまって、そうして、ニコニコしながら帰って行くという人もあるそうである。
涼味数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「飲みちらした残肴ざんこうというやつは、まったく嫌なものだ。見ていると浅ましくなる、早く片づけてしまおうじゃないか」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)