彼は実にこの昏迷乱擾こんめいらんじようせる一根いつこんの悪障を抉去くじりさりて、猛火にかんことをこひねがへり。その時彼は死ぬべきなり。生か、死か。貫一の苦悶くもんやうやく急にして、つひにこの問題の前にかうべを垂るるに至れり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)