日限ひぎり)” の例文
清姫様は蔭膳かげぜんえて待ちに待ちこがれておいでなさるが、日限ひぎりがたっても安珍殿の姿が見えない、気が気ではない、門前を通る熊野帰りの旅僧にたずねてみると、その人ならば
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小暇を得て、修善寺に遊んだ、一——新聞記者は、暮春の雨に、三日ばかり降込められた、宿の出入りも番傘で、ただ垂籠たれこめがちだった本意ほいなさに、日限ひぎりの帰路を、折から快晴した浦づたい。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
淡島さまが助かったということは、その境内にちらばった弁財天、えびす大黒天、日限ひぎりの地蔵、出世地蔵……そうした小さなほこらのいろいろも、ともども無事だったということであります。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
東京恋しく約束の日限ひぎりだけで、いそいでみんな帰って来た。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)