捫著もんちゃく)” の例文
現にきょうもその捫著もんちゃくで、藤吉は一尾を売らずに帰ったという話をしたので、草履屋の家に一尾の鯉のあることをお糸は知っていたのです。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どうしてもひと捫著もんちゃくおこるのは知れています。そこへかの大吉が煙草を仕入れるために、関口屋へ毎日出入りをする。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それが又、次郎兵衛の気に入らないので、そこに何かの捫著もんちゃくがあったようですから、若い者の向う見ずに何処へか立ち去ってしまったのかも知れません。
与右衛門は村の名主で、年貢ねんぐ金を横領したとか云う捫著もんちゃくから、その支配内の百姓十七人が代官所へ訴え出ましたが、これは百姓方の負け公事くじになりました。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「それじゃあ仕方がねえから、わたしの方から口を切ろう。岡崎屋の息子には別に女がある。それが捫著もんちゃくのたねで不縁になった。早く云えばそうだろうね」
ふだんから席争いでお駒とはあんまり折り合いがよくなかったようですが、お駒の方が柳に受けているので、別にこうという揉め捫著もんちゃくも起らなかったんです。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なにしろこの探索では小坊主が大立物おおだてもので、その口から本山派と反対派の捫著もんちゃくを聴いたので、わたくしもそれから初めて探索の筋道をたてたようなわけですからね。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そうして幾年のあいだは、うまく世間の眼を晦ましているうちに、ここに一つの捫著もんちゃくが起りました
江戸と佐倉とはなれていますから、そんな捫著もんちゃくのおこったことを金右衛門はちっとも知らないで、今度の芝居見物に出て来たついでに、八年振りで下総屋へ尋ねて来ました。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なにか捫著もんちゃくでもしているらしい風に見えましたが、なにしろ人通りの多い所だから、二人もいつまで捫著してもいられねえので、まあいい加減に別れてしまったようです。
それで二人は先ず仲よく附き合っていたんですが、さらに一つの捫著もんちゃく出来しゅったいしたんです
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この捫著もんちゃくにおどろかされて、ほかの者もだんだんに起きてきたが、この奇怪な出来事について正当の判断をくだし得るものは一人もなかった。ある者はそんな不思議がないとも限らないと云った。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この捫著もんちゃくはお国という若後家を中心として渦巻き起ったらしい。平七はお国と同い年の二十三歳で、まだ独り者である。藤次郎は二十七歳で、これも女房におとどし死に別れて今は男やもめである。
半七捕物帳:45 三つの声 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)