ない所か、自分の隣にいる、ある柔道の選手の如きは、読本とくほんの下へ武侠世界ぶきょうせかいをひろげて、さっきから押川春浪おしかわしゅんろうの冒険小説を読んでいる。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その時の吾輩の資本というのが、牛乳配達をして貯蓄した十二円なにがしと、千金丹せんきんたん二百枚の油紙包みと来ているんだから、正に押川春浪おしかわしゅんろうの冒険小説だろう。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかしいて過去にこれを求めるなれば、押川春浪おしかわしゅんろう氏の『海底軍艦』などが若き読者の血をわかした時代、つまり明治四十年前後がそうであったようにも思われる。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
狡猾こうかつそうな微笑をもらしながら、すぐまた読本の下にある押川春浪おしかわしゅんろうの冒険小説を、勉強し始めたものである。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)