手繰たぐり)” の例文
「油断じゃないか。北ではまた、南のやつらを、あっといわせようなどと思って、ひっそり、手繰たぐりをつけていねえとも限らねえ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だって、看板に掛けてやがって。」と一人が前を遮るように、独楽の手繰たぐりをずるりと伸す。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その後、私は手繰たぐり網で捕った赤蛸を数杯買い求めて、鴨居の鯛舟に乗り、鴨居式の鯛道具で、観音岩の五、六十ひろの深さの釣り場で試してみたが、とうとう赤蛸には、大鯛が食いついてこなかった。
鯛と赤蛸 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
そんなにして坐っていて、わたしの顔を見ているその目付で、わたしの考えの糸を、丁度まゆから絹糸を引き出すように手繰たぐり出すのだわ。その手繰出されたわたしの考えは疑い深い考えかも知れない。
手繰たぐりしめて駆附け、顔を見てまず安心、——が、その安心をさせないで、八郎は——さような晴がましき席へは出つけませぬ、かくの通り食べ酔いまして、この上御酒宴の席へつらなりましては
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)