意識こころ)” の例文
が、この三月まえの出来事はもとより、七年来の悲しい歳月は、いま小信の意識こころの底に埋められているだけで。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかも、今やそれが矢代の意識こころにも迫って来たのである。たとい千鶴子が直接彼に云わなくとも、何ものかが千鶴子を通し、指で彼をさし示して云ったのと同じだった。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
次に五蘊の中の「受」「想」「行」「識」の四は、意識こころの作用で、すべて主観に属するものです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
まるで意識こころの伴はぬ空虚うつろな動作で何かと辺りへ爪繰るやうな手を動かしたが、煮えたつ鍋にふと手を掛けてアッと叫びさま指を銜え、大袈裟に音けたたましく後退あとじさりした。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)