惟然坊ゐねんばう)” の例文
支考に続いて惟然坊ゐねんばうが、墨染の法衣ころもの裾をもそりと畳へひきながら、小さく這ひ出した時分には、芭蕉の断末魔も既にもう、弾指だんしの間に迫つたのであらう。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その容子ようすをぢろぢろ眺めながら、古法衣ふるごろもの袖をかきつくろつて、無愛想なおとがひをそらせてゐる、背の低い僧形そうぎやう惟然坊ゐねんばうで、これは色の浅黒い、剛愎がうふくさうな支考しかうと肩をならべて、木節の向うに坐つてゐた。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)