心境ここち)” の例文
調子揃つた足擦あしずれの音、華やかな、古風な、老も若きも恋の歌を歌つてゐる此境地さかひから、不図目を上げて其静かな月を仰いだ心境ここちは、何人も生涯に幾度いくたびとなく思浮べて
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
よし何事が次いで起らなかつたにしても、静子は此夜の心境ここちを忘れる事は出来ぬであらう。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
夏の夜、この橋の上に立つて、夜目にもしるき橋下の波の泡を瞰下みおろし、裾も袂も涼しい風にハラめかせて、数知れぬ耳語ささやきの様な水音に耳を澄した心境ここちは長く/\忘られぬであらう。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)