小袿衣こうちぎ)” の例文
わっと泣いて小袿衣こうちぎのたもとに黒髪をうずめたまま、わらべのようにヨヨと泣きじゃくってやまないのは権大納言ノ局であった。また
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、つぶさに見れば、彼女たちの小袿衣こうちぎの袖口にも、帝のお襟にも、白い獄舎虱ひとやじらみが這い出て共に太陽を恋うていたかもしれない。——が、獄もすでに百余日だ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
登子とうこは、白絹の小袿衣こうちぎに、鬢鬘びんかつらして、聟の高氏とならんだ。聟は、布袴直垂衣ぬばかまひたたれである。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小袿衣こうちぎ、よろい直垂ひたたれ、などの風俗画的時代は、さぞかし、のん気なとも想像されるが、いま書いている後醍醐治下の、建武三年の正月などは、暮も元日もあったものではなかったのである。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)