小篠こしの)” の例文
だが、甲府にいるのも工合がわるいし、餞別せんべつまでうけたので、彼は、彼への義理みたいに、かたきのいるこの小篠こしのへ足を向けて来たのだった。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お侍様というものは……」女役者の阪東小篠こしのは、微妙に笑って云ったものである。「お強くなければなりません」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小篠こしのまでの、平坦へいたんな道のように、三五兵衛とお稲の話は、一向それ以上すすまなかった。ここでも自分の冷ややかなものが邪魔をして、女の心を寄せつけないのだ。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大月から猿橋へかかって、桂川の渡舟わたしに姿を見せた三五兵衛は、その渡舟には乗らないで、小篠こしのという村の道をたずねた。そして教えられた川添いの道を下へ向って、ゆっくりと歩いていた。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)