小父者おじご)” の例文
……蕎麦屋そばやの出前持になるのもあり、現在私がその小父者おじごなどは、田舎の役場に小使いをして、濁り酒のかすに酔って、田圃たんぼあぜに寝たもんです。……
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「糸に合うなら踊ります。あのな、私のはな、お能の舞の真似なんです。」と、言いも果てず、お千の膝に顔を隠して、小父者おじごと捻平に背向そがいになった初々しさ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
成程、この小父者おじごが改札口を出た殿しんがりで、何をふらふら道草したか、汽車はもう遠くの方で、名物焼蛤の白い煙を、夢のように月下に吐いて、真蒼まっさおな野路を光って通る。……
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)