家郷かきょう)” の例文
都へ帰る者ですら、家郷かきょう遠くの感にとらわれているらしい。お声はないが、帝の感慨はいうまでもないだろう。外洋の波音が、ここへまで打って来る。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もし工事中に、これらの者の家郷かきょうに不幸があった場合には、さっそく本人を小屋から出したのち、金剛こんごう普賢ふげん両院の山伏をまねいて、そのあとを払いきよめることになっていた。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
心易き家郷かきょうの月や暗くとも
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
疎開先から、もとの家郷かきょうへ帰るのだ。めでたいに違いない。けれど卯木うつぎ夫婦は淋しげであり、久子が三郎丸を抱いて輿こしに乗るまぎわまで、別れを惜しみあっていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)