ひきつ)” の例文
それに、この男の巧者なことには、妙に人懐ひとなつこい、女の心をひきつけるやうなところが有つて、正味自分の価値ねうちよりは其を二倍にも三倍にもして見せた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかしお志保は其程のある花だ、其程人をひきつける女らしいところが有るのだ、と斯う一方から考へて見て、いよ/\其人を憐むといふ心地こゝろもちに成つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
強い、若い、とは言へひきつけるやうに美しい女同志が、赤い脛巾はゞきを當てゝ、吾儕の側を勇ましさうに漕いで通つた。それは榮螺さゞゑを取りに行つて歸つて來た舟だつた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まあ、宗教をしへの方の情熱が籠るとは見えない迄も、何となく人の心をひきつける樸実まじめなところがあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)