みごも)” の例文
登勢とせは一人娘である。弟や妹のないのがさびしく、生んでくださいとせがんでも、そのたび母の耳をあかくさせながら、何年かたち十四歳に母は五十一で思いがけずみごもった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
神此の不思議を見ていたく驚き、アダムを畏れて自らが子となし給いしも、エヴは常人と異ならざれば婢となし、さてエヴといとなみしに、エヴみごもりて女児を生みて死せり。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
早くどうか快くなりたい! みごもつてもみごもつても辛い苦しい思の形見ばかり殘つて、二十九の今だに一人の子もない心細さ、神を怨んでも見たが、今はもうそれは思ふまい! 盲目の父
四十余日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それから、続いて第六節では、エヴみごもりて女児を生む——という文章に意味がある。と云うのは、エヴすなわちdの次の時代——つまりabcdと数えて、dの次のeを暗示しているのだ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)