大鋸おおが)” の例文
頭上ずじょうの騒動はいよいよ爛熟らんじゅくし、ポルトガル人の叱咜しったする声にまじって、帆柱の倒れる音や重いものを曳きまわす音、大鋸おおがで木を挽く音、手斧で打ち割る音
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
近所でそれとなく訊いたところ、作次という男といっしょだとわかった。男はすぐ近くの大鋸おおが町に妻子があり、どこかの料理茶屋の板前だそうだが、どうやらくらしは楽ではないようにみえた。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大鋸おおがのひびきも斧の音もきこえず、馬鈴薯じゃがいも辣薤らっきょうか、葉っぱばかりさやさや揺れているしんとした山岨やまそばの段々畑から派手なような寝ぼけたような歌ごえが聞えてくるというのは
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)