圍繞ゐねう)” の例文
新字:囲繞
北極帶の、廣大な一帶、荒凉たる地方——霜と雪の貯藏地、そこには、幾世紀もの冬の堆積たる、堅い氷原ひようげんが、極地きよくち圍繞ゐねうして
彼女は、そのあとに從つて、ひそかにかなしい杖の音を立てたが、危さと苦しさと、弱い恐れとかなしみが、彼女のすべてを圍繞ゐねうした、けれども、彼女は、はずむ息を靜めた。
幸福への道 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ペエテルブルクに在りし間に余を圍繞ゐねうせしは、巴里絶頂の驕奢を、氷雪の裡に移したる王城の粧飾、ことさらに黄蝋の燭を幾つ共なく點したるに、幾星の勳章、幾枝の「エポレツト」が映射する光
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)