喰入くいい)” の例文
からっきしそれには「芸」の何たるかが分っていなかった。ということはでてくる人物の心持ちへ喰入くいいるすべを露ほどもわきまえていなかった。何ともいえない哀れ惨憺たるその……。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ふと、この街をめぐる、或る大きなものの構図が、このとき正三の眼に描かれて来だした。……清冽せいれつな河川をいくつか乗越え、電車が市外に出てからも、正三の眼は窓の外の風景に喰入くいいっていた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)