君子人くんしじん)” の例文
閻婆えんば老舌ろうぜつとソラ涙に負けただけでなく、この君子人くんしじんにも、おのれに負ける一面があったといえる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「牧瀬が帰朝してると聞いたが、やつぱりさうかい。うん、あの男は後輩の中でも天才的な特長があるらしいけど、多少変りものなのだ、根は君子人くんしじんだ。さうなあ、交際つて別に毒になるほどのこともないが、利益にもならんね。」
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
少し頭の地が見える頭髪をきれいに分け、商人でもなし職人肌でもない、瀟洒しょうしゃな市井の君子人くんしじん肌といったような旦那であった。声までが低めで温厚な女性音をふくんでいる。
この謹直な君子人くんしじんのまえでは、将門も、かつての洟垂れ童子の頃そのまま、ただ、畏まって、往年の恩義を謝したり、これからの勤勉と、家運の挽回をちかうくらいが、関のやま
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妾宅の旦那でこそあれ、いわゆる世の旦那型ではない、彼の君子人くんしじん的な性質は、女を持っても酒を飲んでも根ッから常日頃の——及時雨きゅうじうそう公明の人柄をちっともくずす風がない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)