合歓綢繆ごうがんちゅうびゅうを全うせざるもの詩家の常ながら、特に厭世えんせい詩家に多きを見て思うところなり。そもそも人間の生涯に思想なる者の発芽しきたるより、善美をねがうて醜悪を忌むは自然の理なり。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)