勝美かつみ)” の例文
その頃私は芝居へ行く時は、必ず眼鏡オペラグラスを持って行ったので、勝美かつみ夫人もそのまる硝子ガラスの中に、燃え立つような掛毛氈かけもうせんを前にして、始めて姿を見せたのです。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私は息苦しい一瞬の後、今日も薔薇を髪にさした勝美かつみ夫人をひややかに眺めながら、やはり無言のまま会釈えしゃくをして、匇々そうそうくるまの待たせてある玄関の方へ急ぎました。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すると三浦は例の通り、薔薇ばらの花束を持った勝美かつみ夫人の額の下に坐りながら、『ひどく君はあの男が嫌いじゃないか。』と、たしなめるような声で云うのです。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)