旧字:剽盜
飛出そうか、飛出そうかと潮時を見て居た足の勇も、妙に悩ましい丹波高一の眼に射すくめられて、剽盗退治の一役を買って出る出鼻を挫かれます。
「剽盗泥棒ならあきらめて帰るがよかろう。この通り無禄の浪人者だ、一文も持合せがない、その上年こそ取っているが、拙者は腕が出来ているぜ、ハッハッハッハッ」
辻斬や剽盗は憎いが、こんなに手を焼かせるのは、よっぽど悪智恵の廻る奴だろう、——待てよ、何だって小田巻直次郎を殺したんだ、——小田巻直次郎は辻斬じゃねえ