分限者ぶげんしや)” の例文
勘辨などは思ひも寄らねえ、——なア、相模屋さん、あつしはケチな植木屋、お前さんは江戸の長者番附にもるほどの分限者ぶげんしやだ。
だからよ、最初から瓶に五十兩入つてゐたか、千兩二千兩の金のうちから、五十兩だけ伊三郎が取り出したか、——兎も角小橋屋小左衞門は近頃の分限者ぶげんしやだ。
數寄すきを凝した庭をめぐらして、木戸もへいも恐ろしく嚴重な上に、住居の木戸も頑丈で、鼠一匹もぐり込めさうもない構へは、さすがに山の手屈指の分限者ぶげんしやだけのことはあります。
「磯の安松と、伊賀屋の源三郎と、兩手に花とふざけて居たお喜美が、——親の秋山佐仲の入智惠もあつたことでせうが、本郷で指折りの分限者ぶげんしや、田原屋の嫁になる氣になつた」
小森彌八郎といふかなりの分限者ぶげんしやで、昔は槍一筋の家柄であつたと言ひますが、今では町内の大地主として、界隈かいわいに勢力を振ひ、娘のお通の美しさと共に、山の手中に響いて居ります。
「池田屋といふのは、お山の御用を勤めてゐる、分限者ぶげんしやぢやないか」
おびたゝしい支度金と、顏の良い媒人なかうどと、そして、たつた一ぺんの見合ひで、話はトントン拍子に進み、その年の秋には、ケチな荒物屋の一人娘が、江戸でも有名な分限者ぶげんしや、車坂の池田屋の嫁御寮として