傾城買けいせいかい)” の例文
三ヶ津の総芸頭そうげいがしらとまで、たたえられた坂田藤十郎は傾城買けいせいかい上手じょうずとして、やつしの名人としては天下無敵の名をほしいままにしていた。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼は、二十の年から四十幾つと云う今まで、何の不安もなしに、濡事師ぬれごとしふんして来た。そして、藤十郎の傾城買けいせいかいと云えば、竜骨車りゅうこしゃにたよる里の童にさえも、聞えている。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
傾城買けいせいかい経緯いきさつなれば、どんなに微妙にでも、演じ得ると云う自信を持った藤十郎も、人妻とののろわれた悪魔的な、道ならぬしかし懸命な必死の恋を、舞台の上にどう演活しいかしてよいかは
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
弥五七 (道化方らしく誇張した身振りで)さればこそ前代未聞の密夫みそかおの狂言じゃ。傾城買けいせいかいにかけては日本無類の藤十郎様を、今度はかっきりと気を更えて、密夫にしようとする工夫じゃ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)