傅育ふいく)” の例文
以前は王子傅育ふいく官を務めて、今も嬢の頭の中をころがっている、フィリップ殿下の御幼少時代は、この人が御養育したのだという。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
だから後醍醐とすれば、ほんとは、母ちがいの弟なのだが、事情のため、認知されない父の子恒性つねさがを、自身の養子にいれ、わが皇子なみに、傅育ふいくをさせて来たものだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母というのは前にも述べたごとく、甘露寺親長の姉で、寡婦となってのち子の傅育ふいくに忙わしかったが、文明二年十月の末実隆が十六歳に達し、従四位下少将まで進んだ時、鞍馬寺において落髪した。
「ゆえあってそちと君尾とは、生まれ落ちるから手もとに置けず、残念ながら嬰児みつごのうちから、一人は銅兵衛、一人は平左衛門へ託して傅育ふいくさせたのだが、逢わざること十数年! ……兵庫兵庫!」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
殺されているのは、四、五日前にこの邸へ入ったきり、姿を見せぬとエッベから知らせのあった、あの元傅育ふいく官の老人であろう。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)