係恋あこがれ)” の例文
みんなが気の毒がつて、やつと拾つて来た木の実を、少しづゝ分けて遣りました。大方爺いさんは流浪人の係恋あこがれとでもいふやうな心持になつてゐたのでせう。
これまで対象のない係恋あこがれに襲われたことのあるに比べて見れば、この空想の戯れは度数も多く光彩も濃いので、純一はこれまで知らなかった苦痛を感ずるのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
久しく忘れたりしに、その係恋あこがれに我また襲はる。
猛烈な意志の力で、或るにがい、悲しい係恋あこがれじみたものの現はれようとするのを抑へてゐるらしく見える。
わたしだってこれ程の係恋あこがれの力で、またとない
恋愛もなければ、係恋あこがれもない。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
多分疲れたのと、夜の寒さと戦つたのと、今一つは深い霧を冒して寂しい夜道をさまよつて、人懐しい係恋あこがれの情を起してゐるのとに依つて、この憂愁の趣は現はれてゐるのだらう。
その時めぐみある不可思議な係恋あこがれが775