佗住わびずま)” の例文
是非もなく旧句をおもいいだしてせめふさぐことも、やがて度重たびかさなるにつれ、過ぎにし年月、下町のかなたこなたに佗住わびずまいして、朝夕の湯帰りに見てすぎし町のさま
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
震災後ずっと田端の坂の下の小家におじとおばと二人きりで佗住わびずまいをしている方へまわった。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
私の意識上の人生は、突然私の父があらわれて、そんな佗住わびずまいをしていた母や私を迎えることになった、曳舟通ひきふねどおりに近い、或る狭い路地の奥の、新しい家のなかでようやく始っている。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)