上簇じょうぞく)” の例文
のり子のふっくりしたまぶたや顎のところが、上簇じょうぞくまえの蚕の肌のような鈍い透明な色になった。伸子にのり子のせつなさが感染した。
二つの庭 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そして、鈍白にぶじろく半透明の、例えば上簇じょうぞくに近いかいこを思わせた。爪もまた桜色の真珠を延べたような美しさだった。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そして、ここ一年余りの間に、桑でなくともちさである程度養えること、冬でも上簇じょうぞくできること、煮ないでも糸がとれることを、死物狂いで、試験的に成功さした。
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
多くの地方では旧暦四月、かいこ上簇じょうぞく麦苅入むぎかりいれの支度したくに、農夫が気を取られている時分が、一番あぶないように考えられていた。これを簡明に高麦のころと名づけているところもある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)