上下のぼりくだり)” の例文
峠で力餅ちからもちを売りました、三四軒茶屋旅籠はたごのございました、あの広場ひろッぱな、……俗に猿ヶ馬場ばんば——以前上下のぼりくだりの旅人でさかりました時分には、何が故に、猿ヶ馬場だか
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わつしは旦那に申し上げた通り、越後屋重吉と云ふ小間物渡世で、年にきつと一二度はこの街道を上下のぼりくだりしやすから、善かれ悪しかれいろいろな噂を知つて居りやすので、つい口から出まかせに
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それと同時に小児こどもの事が気になって……言い出すと、女中ともう寝たろう。で、大して心配もしない様子、成程寝る時刻、九時ちと過ぎたかも知れない。汽車が二三度上下のぼりくだりした。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)