おつまは失意の女として、三十間堀さんじゅっけんぼりのある家の二階から、並木の柳の葉かげ越しに、お鯉が嫁入りの、十三荷の唐草からくさの青いゆたんをかけた荷物を、見送っていたのだときいている。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)