万象ものみな)” の例文
旧字:萬象
遠くで鴎の声さへ聞えなかつたなら、万象ものみなが唖になつたのかとも思はれたであらう。ところが、ふと何かがさごそいふ物音が聞える……。
万象ものみなのものの生命いのちはさやけくも伸びて行くらし青き空見る。
獄中通信 (新字新仮名) / 戸坂潤(著)
また寒き万象ものみなうれひのうへに
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まだ、どこかで遠い海洋うみの呟やきにも似た足拍子の音だけは聞えてゐたが、間もなく一切の万象ものみなが空寂の底に沈んでしまつた。
彼には万象ものみなが、八方から彼を捕へるために追つかけて来るやうに思はれた。
見わたすかぎり地上の風景はまどろんでゐる。けれど天空は息づいてをり、万象ものみなが奇しくも、荘厳である。そして人間の魂の奥底にも銀いろの幻像まぼろしが際限もなく、いみじき諧調をなして群がりおこる。