一望ひとめ)” の例文
「ご尤もじゃ。御当家はお庭も広し、品川の海も一望ひとめ。近火のせつは、各〻を庭へ集める御規則ゆえ、火事でもあれば、庭を、御案内いたそうものを……」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京洛中は、ここから一望ひとめだった。膝を抱いている身のそばには、土筆つくしがあたまをそろえていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの座敷に寝ころんで見たら、房総ぼうそうの海も江戸の町も、一望ひとめであろうと思われる高輪たかなわ鶉坂うずらざかに、久しくかかっていた疑問の建築たてものが、やっと、この秋になって、九分九厘まで竣工できた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)