“しくわし”の漢字の書き方と例文
語句割合
私窩子100.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
だからこの私窩子しくわしのやうな女が会釈ゑしやくをした時、おれは相手をいやしむより先に、こちらも眼で笑ひながら、黙礼を返さずにはゐられなかつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宿無しや立ん坊が私窩子しくわしをひきずりこむ処である。二人は食卓について、いやな臭のするランプの光で不潔な空気の中に浮き出してゐる人の皮をかぶつた汚い獣どもを見た。
バルタザアル (新字旧仮名) / アナトール・フランス(著)
少女は名を宋金花そうきんくわと云つて、貧しい家計を助ける為に、夜々よなよなその部屋に客を迎へる、当年十五歳の私窩子しくわしであつた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その内に或夕方、ふとおれが向うの二階の窓を見ると、黄いろい窓掛をうしろにして、私窩子しくわしのやうな女が立つてゐる。どうも見た所では混血児あひのこか何からしい。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おれがあの黄いろい窓掛のうしろに住んでゐる私窩子しくわしのやうな女を知らずにゐたら、おれの待ちに待つてゐた客の一人は、とうにこの電鈴の愉快な響を、おれの耳へ伝へたのに相違あるまい。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
所が彼是かれこれ一月ばかり前から、この敬虔けいけん私窩子しくわしは不幸にも、悪性の楊梅瘡やうばいさうを病む体になつた。これを聞いた朋輩の陳山茶ちんさんさは、痛みを止めるのに好いと云つて、鴉片酒あへんしゆを飲む事を教へてくれた。
南京の基督 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)