宇治うじ)” の例文
宇治うじに着いたのが夜の九時。万碧楼まんぺきろう菊屋に往って、川沿いの座敷に導かれた。近水楼台先得月、と中井桜洲山人のがくがかゝって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
王子おうじ宇治うじ柴舟しばぶねのしばし目を流すべき島山しまやまもなく護国寺ごこくじ吉野よしのに似て一目ひとめ千本の雪のあけぼの思ひやらるゝにやここながれなくて口惜くちおし。
かねて旧師宮川寛斎みやがわかんさいが伊勢宇治うじ館太夫方かんだゆうかたの長屋で客死したとの通知を受けていたので、その墓参を兼ねての思い立ちであった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼の持ち帰った新種は首尾よく三か所に植え付けられ、その一か所京都に近い宇治うじは、今なお世にもまれなる名茶産地の名をとどめている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
網代人は網代の番をする人。千早ちはや人はうじに続き、同音の宇治うじに続く枕詞である。皆、旅中感銘したことを作っているのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そのばん宇治うじちかくで日がれました。若者わかものはゆうべのようにまたぬのたんして、一けんいえめてもらいました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いや、今まで毎年、宇治うじの茶匠へあの壺をつかわして、あれにいっぱい新茶を詰めて、取り寄せておるのです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
時には宇治うじまでも行って、万福寺まんぷくじの墓地にある碑文を写して来たりなどもしました。帰京後にも、伝記に関しては、いろいろかげの補助をして上げておりました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
文楽座で見た朝顔日記の宇治うじの場面、———人形の深雪みゆき駒沢こまざわとが屋形船の中でささやきを交す情景を知っているだけで、妙子が云ったように友禅の振袖ふりそでなどを着て
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
宇治うじの山の上に絹の幕を張り、とばりを立てまわして、一人のご家来けらいを、りっぱな皇子のようにしたてて、その姿すがたが山の下からよく見えるように、とばりの一方をあけて
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
隙間すきまなくしぶれた劈痕焼ひびやきに、二筋三筋あいを流す波をえがいて、真白ましろな桜を気ままに散らした、薩摩さつま急須きゅうすの中には、緑りを細くり込んだ宇治うじの葉が、ひるの湯にやけたまま
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
源氏以外の文学及びまた更に下っての今昔こんじゃく宇治うじ著聞集ちょもんじゅう等の雑書に就いてうかがったら、如何にこの時代が、魔法ではなくとも少くとも魔法くさいことを信受していたかが知られる。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
継いだばかりです。昔からの老鋪しにせですから、財産は随分ありましょう。同業者中でも屈指だそうです。宇治うじに別荘があります。店丈けでも雇人が十何人とか申しました。工場の方は……
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もちろん、宇治うじまでは、一名の小侍が、口輪をって駒にいて行く。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶は鎌倉かまくら時代の始めごろに、えらい禅宗ぜんしゅうの僧が支那から持ってかえり、九州では肥前ひぜん背振山せふりやま、それから都近くの栂尾とがのお宇治うじえたということになっているが、この説の半分はまちがっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
宇治うじ黄檗山おうばくざんを今しもで来たりたる三人みたり連れ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
宇治うじ大納言隆国だいなごんたかくに
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十世紀にできた宇治うじ鳳凰堂ほうおうどうには今もなお昔の壁画彫刻の遺物はもとより、丹精たんせいをこらした天蓋てんがい、金をき鏡や真珠をちりばめた廟蓋びょうがいを見ることができる。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
京都宇治うじ奈良宮島みやじま日光等の神社仏閣とその風景との関係は、暫らくこれを日本旅行者の研究に任せて、私はここにそれほど誇るに足らざる我が東京市中のものについてこれをよう。
宇治うじちゃどころ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
宇治うじわた
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)