“髪(け)” の例文
旧字:髮
女盛りの脂の乗ったお才、色白で髪(け)の多い具合、媚(こび)を含んだ、無恥な目差し、紅い唇——など、いかにも罪の深さを思わせるに充分な女です。
その男は、盲縞(めくらじま)のつかれた袷(あわせ)に、無造作に帯を巻きつけ、蓬(よもぎ)のような頭の髪(け)を海風(かいふう)に逆立たせて、そのせいか、際立って頬骨(ほほぼね)の目立つ顔を持った痩身(そうしん)の男であった。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
危なく声を立てようとして、待てしばし、万一(ひょっと)敵だったら、其の時は如何(どう)する? この苦しみに輪を掛けた新聞で読んでさえ頭(かみ)の髪(け)の弥竪(よだち)そうな目に遭(あ)おうも知(しれ)ぬ。
おっかさんがおどろいて泣(な)いてポーセの名を呼(よ)びながら一生(いっしょう)けん命(めい)ゆすぶりましたけれども、ポーセの汗(あせ)でしめった髪(け)の頭はただゆすぶられた通りうごくだけでした。
手紙 四 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それに慣れて了つて、昌作も挨拶するでもなく『暑い/\。』と帽子も冠らずに来た髪(け)のモヂヤ/\した頭に手を遣つて、荒い白絣の袖を肩に捲り上げた儘腰を下した。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
土方(どかた)などと云う労働者によく見る様な、あの細い髪(け)がチリチリと巻かって、頭の地を包み、何となく粗野な、惨酷な様な感じを与える頭の形恰をこの男は持って居るけれ共
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私(わたし)は、坊(ぼう)やのお母(かあ)さんじゃありません。その証拠(しょうこ)に、私(わたし)の頭(あたま)の髪(け)は、こんなに灰色(はいいろ)がかっています。しかし私(わたし)は、坊(ぼう)がさびしいのをよく知(し)っている。私(わたし)が、おまじないをしてあげる。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
アノ傷は決して不意打で無く随分闘った者だから夫は最(も)う男には違い無い(大)サア既に男とすれば誰が一尺余りの髪(け)を延(のば)して居ますか代言人の中には有(ある)とか言いますけれど夫は論外
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
薄(うす)い髪(け)の、かじかんだお盥結(たらひむす)びで、襟(えり)へ手拭(てぬぐひ)を巻(ま)いて居(ゐ)る、……汚(きたな)い笈摺(おひずり)ばかりを背(せ)にして、白木綿(しろもめん)の脚絆(きやはん)、褄端折(つまばしより)して、草鞋穿(わらぢばき)なのが、ずつと身(み)を退(ひ)いて、トあとびしやりをした駅員(えきゐん)のあとへ
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
「何に、少しは風を通さないと善くないのよ。御用というのは欠勤届のことでしょう、」と主人の少女は額から頬へ垂れかかる髪(け)をうるさそうに撫であげながら少し体駆(からだ)を前に屈(かが)めて小声で言った。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
皆(みんな)に見つかると悪いから乃公は自分の室へ駆け上がった。三時までは戸棚の中にでも匿(かく)れようかと考えていたら、お島が入って来た。乃公は突然(いきなり)搦(かじ)り付いた。婦人(おんな)と喧嘩する時には髪(け)を引張るに限る。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
掻きむしつた亜麻色(あさいろ)の髪(け)の、泣き出しさうな青い面(つら)つきで
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「そうか、そうして頭の髪(け)は?」
親の代から髪(け)のないわれに
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長官此(この)髪(け)を御覧なさい是はアノ死人が右の手に握って居たのですよ(荻)オヤ貴公も夫(それ)を持て居るか谷間田も昨日一本の髪を持て居たが(大)イエ了(いけ)ません谷間田より私しが先へ見附たのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
容貌(かおだち)は長い方で、鼻も高く眉毛(まゆげ)も濃く、額は櫛(くし)を加えたこともない蓬々(ぼうぼう)とした髪(け)で半ばおおわれているが、見たところほどよく発達し、よく下品な人に見るような骨張ったむげに凸起(とっき)した額ではない。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
こんな事を言つて、後頭(うしろ)にだけ少し髪(け)の残つてゐる滑かな頭をつるりと撫でて見せた。皆(みんな)は笑つた。笑ひながら多吉は、此の老人にもう其の話を結末(おしまひ)にせねばならぬ暗示を与へる事を気の毒に思つた。
道 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たなばたの色紙購ふと、 追ひすがる赤髪(け)のうなゐ。
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
石油ににじむ赤き髪(け)に雑種児(あひのこ)の矜(ほこり)を思ひ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やれ、髪(け)が生よか
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
油のない赤髪(け)をもじやもじやして
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)