雑兵ぞうひょう)” の例文
旧字:雜兵
こちら側の経蔵もやはり同じことであったのでございましょう、松明たいまつを振りかざした四五人の雑兵ぞうひょうが一散にせ寄って参りました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
そこには、白旗しらはたみやのまえから、追いつ追われつしてきた小幡民部こばたみんぶが、穴山あなやま旗本はたもと雑兵ぞうひょうを八面にうけて、今や必死ひっしりむすんでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
骨になってしまえば馬も義朝も大した変りはないように、鼻のかけらだけでは大将とも雑兵ぞうひょうとも見分けはつかなかった筈である。
教えてくれる。雑兵ぞうひょうならば武術も習うがよかろう。しかし一軍の大将たる者はそんな小さな事にかかわる必要がない
蒲生鶴千代 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
雑兵ぞうひょうばらの二、三百は物の数じゃねえんだから、さすが真田幸村さなだゆきむらの息がかかった連中だけあって、しゃれたまねしたものだが、ところがそれが大笑いさ。
間違いはないが卑怯ひきょうだぜ! 勇気があったら渦中かちゅうへ投じろ! が待ってくれ、そうはいっても、むやみと雑兵ぞうひょうに荒らされても、探索の手口が狂ってしまう。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
舞台に立って、児島高徳こじまたかのりに投げられた雑兵ぞうひょうが、再び起上って打向ってくるはずなのが、投げられたなりになってしまったほど、彼らは疲労困憊こんぱいの極に達していた。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
単に上級生の命令によって玉拾いなる雑兵ぞうひょうの役を勤めたるところ、運わるく非常識の敵将、逆上の天才に追い詰められて、垣越えるもあらばこそ、庭前に引きえられた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その堅い結び付きは、実際の戦闘力を有するものから、兵糧方ひょうろうかた賄方まかないかた雑兵ぞうひょう歩人ぶにん等を入れると、千人以上の人を動かした。軍馬百五十頭、それにたくさんな小荷駄こにだを従えた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もし果してそうならば、猪早太いのはやたほどにもない雑兵ぞうひょう葉武者はむしゃのわれわれ風情が、遠慮なしに頭からざぶざぶ浴びるなどは、遠つ昔の上臈じょうろうの手前、いささか恐れ多き次第だとも思った。
秋の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
古いながら具足も大刀もこのとおり上等なところで見るとこの人も雑兵ぞうひょうではないだろう。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
「緋鯉は立派だから大将だろうが、鮒は雑兵ぞうひょうでも数が多いよ……かた一杯いっぱいなんだもの。」
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょうど昔の武士が雑兵ぞうひょうを相手とせず、まっしぐらに敵の大将に近づいて、一騎打の勝負をいどんだように。ではどこに怒りの焦点を定めるのか。誰を最も大きな敵として選ぶのか。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
これらは無上に高値な糞であろう。わが邦でも古く陣中に馬糞をたきぎにし、また馬糞汁もて手負いを療じた(『雑兵ぞうひょう物語』下)。したがって馬糞を金ほど重んじた場合もあったものか。
こちら側の経蔵もやはり同じことであつたのでございませう、松明たいまつを振りかざした四五人の雑兵ぞうひょうが一散にせ寄つて参りました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
かみは大将伊那丸いなまるから、した雑兵ぞうひょうにいたるまで、死の冠をいただいてのこの戦いに、大事なかれのいあわせないのは、かえすがえすも遺憾いかんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恰好かっこうな奴を見つけて、その首を斬り、にせの證人をこしらえるか、雑兵ぞうひょうどもを買収すればよい訳だけれども、それは法師丸の武士の良心が許さなかった。
あそこのかどに張っていた雑兵ぞうひょうをうまいことおだてて聞き出したんだがね、あば敬大将はあの下手人をのどえぐり修業のつじ切りだとかなんだとかおっかねえがんをつけてね
学校へはいって、嘘を吐いて、胡魔化ごまかして、かげでこせこせ生意気な悪いたずらをして、そうして大きな面で卒業すれば教育を受けたもんだと癇違かんちがいをしていやがる。話せない雑兵ぞうひょうだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また、奇兵隊の雑兵ぞうひょうから身を起こして、未来の国士を夢みていたのも、この壮丁そうていの中には一人や二人あるはずだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
首と云うものは、名もない雑兵ぞうひょうのものなら知らぬこと、一廉ひとかどの勇士の首であったら皆そう云う風に綺麗きれいに汚れを除いてから、大将の実検に供えるのである。
万が一にも雑兵ぞうひょう乱入のみぎりなどにはかえって僧形そうぎょうの方が御一統がたの介抱を申上げるにも好都合かと思い返し、慣れぬ手に薙刀なぎなたをとるだけのことに致しました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
ひどくこの虫めがね組が取るに足らない雑兵ぞうひょうのように聞こえますが、これがなかなかどうして、ただの取り的どもだと思うとたいへんな勘違いで、実にこのお三代家光公の寛永年間は
万が一にも雑兵ぞうひょう乱入のみぎりなどにはかえつて僧形そうぎょうの方が御一統がたの介抱を申上げるにも好都合かと思ひ返し、慣れぬ手に薙刀なぎなたをとるだけのことに致しました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
お叱りにはございますが、下御所しもごしょさまの御厳達により、近来は、雑兵ぞうひょうたりといえ、捕虜はその日にみな斬ることにしておりまする。……なにぶんにも味方を
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雑兵ぞうひょうの手に懸り給うか、遠国へ流されて俊寛の憂き目を見給うか、又は介錯人もなき御生害を遂げらるゝか、そうなってから後悔あるとも追い着きは致しませぬぞと
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「どけっ。おまえなんぞ雑兵ぞうひょうでは手も出まい。おれがりょうる!」
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
そんな時、はからずも、軽装した秀吉が、馬で陣見廻りなどに来ると、あわてて雑兵ぞうひょうたちは釣竿を捨てたが、秀吉は気づいても、ただニヤニヤと見て通った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに食堂じきどう、つづいて講堂も焼け落ちたらしく、火の手が次第に仏殿に迫って参ります頃には、そこらにちらほら雑兵ぞうひょうどもの姿も赤黒く照らし出されて参ります。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
此処を駈け抜けることはかないませぬ、まだ此の先にいくらでも人数が伏せてござりましょうから、雑兵ぞうひょうの手におかゝりなされて犬死なさるのは必定でござります、先ず山崎にお越しなされて
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もとより雑兵ぞうひょうにはちがいない。市松も虎之助も、びっくりしたが、それ以上、敵兵のほうが逆上あがっていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに食堂じきどう、つづいて講堂も焼け落ちたらしく、火の手が次第に仏殿に迫つて参ります頃には、そこらにちらほら雑兵ぞうひょうどもの姿も赤黒く照らし出されて参ります。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
十兵衛、弥平治のわずか二人に突き崩されて、逃げたものとすれば、蜂須賀衆も口ほどもない雑兵ぞうひょう級の者ばかり——と密かにさげすみながら、なお、耳をいでいた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
綱を投げて、救い上げてやると、それは馬を洗いに下りた雑兵ぞうひょうで、余り流れが静かに見えるし、浅いとばかり思っていたので、つい深みへちて溺れかけたのだという。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ほかの雑兵ぞうひょうには目もくれないで、まっしぐらに、武者走り(城壁じょうへき細道ほそみち)をかけぬけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな雑兵ぞうひょうの中でない、総軍の大将の陣所へゆき、その保護を求めようと考えたのである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵の雑兵ぞうひょうをも相手にして雑兵の如き奮戦すら敢えてした。「名もなき者に首を取られんことの口惜し——」などという生やさしい名聞などは彼の顧慮こりょするところでない。——死のうは一定いちじょうだ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くのは、まだらの牛、護るのは、眼をひからした刑吏けいり雑兵ぞうひょうであった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中でも、若い雑兵ぞうひょうのひとりは、大げさな表情を、そのことばと共にして
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雑兵ぞうひょうめら」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)