金無垢きんむく)” の例文
斉広なりひろの持っている、金無垢きんむく煙管きせるに、眼をおどろかした連中の中で、最もそれを話題にする事を好んだのは所謂いわゆる、お坊主ぼうずの階級である。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
果して、木像の中から金無垢きんむくの大変な仏像が現われました。大師入唐にっとうのとき、請来しょうらいしたのではあるまいかという——これは後の話——。
かどのパレエの大時鐘おほどけい、七時を打つた——みやこの上に、金無垢きんむく湖水こすゐと見える西のそら、雲かさなつてどことなく、らいのけしきの東の空。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
伴「実は江戸へ仕入しいれに行った時に、あの海音如来の金無垢きんむくのお守を持って来て、此処こゝへ埋めて置いたのだから、掘出ほりだそうと思って来たんだ」
金無垢きんむくの伸べ棒を芯にした蝋燭……不思議な物もあるものだと思うに付けて、わたくしは又急に気味が悪くなりました。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大きな頬の黒子ほくろ一ツ残してそのほかは真ッ白けに塗りたくり、半裸同様なあらわな腕には金無垢きんむく腕環うでわデカデカ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それだからつい見かけないと言ったのさ。金無垢きんむくで目と歯が銀の、ぶち赤銅しゃくどうか。出来合にはこんな精巧なものはない。この歯は一本々々後から植えたもんだぜ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この刀なんぞもその一つじゃ、よく見て置かっしゃれ、鞘はこの通り梨子地……つば象眼ぞうがん扇面散せんめんちらし、縁頭ふちがしらはこれ朧銀ろうぎんで松に鷹の高彫たかぼり目貫めぬきは浪に鯉で金無垢きんむくじゃ
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
作りは父の好みで、彼女の爲めにとりの歳にちなんで金無垢きんむくの雞の高彫たかぼりを目貫めぬきに浮き出させ、鞘は梨子地なしぢで、黒に金絲を混ぜたふさ付きの下げ緒が長く垂れ、赤地金襴の袋に入つてゐる。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
笠鉾の上には金無垢きんむく烏帽子えぼしを着用いたしました女夫猿めおとざるをあしらい、赤坂今井町は山姥やまうば坂田金時さかたのきんとき、芝愛宕あたご下町は千羽づるに塩みの引き物、四谷大木戸は鹿島かしま明神の大鯰おおなまずで、弓町は大弓
と云って、死霊除しりょうよけのおまもりをかしてくれた。それは金無垢きんむくで四寸二分ある海音如来かいおんにょらいのお守であった。そしてそれとともに一心になって読経どきょうせよと云って、雨宝陀羅尼経うほうだらにきょうという経文きょうもんとおふだをくれた。
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大将「うん。金無垢きんむくだからな。かしちゃいかんぞ。」
饑餓陣営:一幕 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
金無垢きんむくのするどさよ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
だから、その当主たる斉広が、金無垢きんむくの煙管を持つと云う事は、むしろ身分相当の装飾品を持つのに過ぎないのである。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
純子どんす座蒲団ざぶとんの上に坐って、金無垢きんむく煙管きせるで煙草を吸っている春見は今年四十五歳で、人品じんぴんい男でございます。
「でも、茶釜は金無垢きんむくで、千両箱でも出さなきゃア買えないほどの代物しろものですぜ。江戸中の道具屋がわざわざ見に行ってきもをつぶしたんだから嘘じゃねえ」
まずこの目貫めぬきでございますな、これが金獅子ぼたんでございますよ、もとより金無垢きんむく——しかも宗珉そうみんというところは動かないところでげして、それからはばきが金、切羽せっぱが金
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
金無垢きんむくの福々しいそのお姿をばどこにも見せていないのです。
金無垢きんむくのほそき月。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あの金の環を受取った時、すぐ寸法を取って、町内のかざり屋に頼んで手に入れたんだ。とんだ役に立ったよ。もっともあれは金無垢きんむくだったが、おれは貧乏だから鉄で間に合せたよ。
ひらいて見れば、金無垢きんむくの観音の立像りつぞうでございます。裏を返して見れば、天民てんみんつゝしんでこくすとあり、厨子の裏に朱漆しゅうるしにて清水助右衞門としるして有りますを見て、清次は小首を傾け。
「それに、なんでございますな、さいぜんから申し上げる通り、こしらえが大したもんでござんしてな、要所要所とこの定紋は金無垢きんむくでございますぜ、つぶしに致しましても……」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「なに、金無垢きんむくの煙管なら、それでも、ちょいとのめようと云うものさ。」
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「正真正銘金無垢きんむくのお大黒さまでござります」
金無垢きんむくの月。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
金無垢きんむくの大日如來といふのは、本堂の奧に安置した教祖の木像の胎内佛たいないぼとけで、別にお厨子を作つて見えるところに安置したのは、少しでも寺内を賑やかにしようと言ふ住職の商賣氣
どうしても遁れられないが、死霊よけのために海音如来かいおんにょらいという大切の守りを貸してやる、其の内に折角施餓鬼せがきをしてやろうが、其のおまもり金無垢きんむくじゃにって人に見せると盗まれるよ
金無垢きんむくの大日如来というのは、本堂の奥に安置した教祖の木像の胎内仏で、別にお厨子を作って見えるところに安置したのは、少しでも寺内を賑やかにしようという住職の商売気
金無垢きんむくたけは四寸二分の如来様だそうだ、己も此の間お開帳の時ちょっと見たが、あの時坊さんが何か云ってたよ、なんとかいったっけ、あれにちげえねえ、なんでも大変な作物さくものだそうだ
「悪性男は、——江戸一番の分限ぶげんと言いふらして、金無垢きんむくの鯉で私の父親をたぶらかしました。あれがその時の金無垢の鯉ですよ、——銅に薄く金を着せたとは田舎者の眼が届きません」
良人が注文して彫らせた観音さまで金無垢きんむくでがんすから、つぶしにしてもえらく金になると、良人も云えば人さまも云いやすが、金才覚かねさいかくの出来るまで三円の抵当かたに此の観音さまをお厨子ずしぐるみ預かって