しゃ)” の例文
所名ところな辻占つじうらも悪い。一条戻り橋まで来たときだった。供奉ぐぶの面々は急にながえを抑えて立ちどまった。いやしゃ二、み車をまわし初めた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで江戸へ運ばれて以来、欲気よくけの多い連中が、しゃ二無二そいつを奪い合ったのでござる。いやこれとてももっともで。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
少しも声をあげない、息を詰めて、殆ど捨て身の動作で、しゃ二無二斬り込み、斬り込み、そして斬り込んだ。
つばくろ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しゃ二無二打ちくじきながら、外部から進入してきて、通りぬけて、かれの存在を、かれの生活の文化を、ふみにじりうちくだいたままに残して行ったのである。
あたま数で押して、しゃ二討ちとってしまおうと、自分はすばやく岩淵達之助いわぶちたつのすけのうしろへまわって
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
手ぬるし手ぬるしむごさが足らぬ、我に続けと憤怒ふんぬの牙噛み鳴らしつつ夜叉王のおどり上って焦躁いらだてば、虚空こくうち満ちたる眷属、おたけび鋭くおめき叫んでしゃに無に暴威を揮うほどに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
曹操は彼の言を容れて、初めの大軍を改編し、雷挺隊らいていたいと称する騎馬と車ばかりの大部隊をひいて、しゃ二、遼西の境へ侵入した。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
訳の解らねえ奴が大将になり、さて一旦大将になると、しゃ二そいつに獅噛み付く。子供から孫、孫から曽孫ひまご、ずっと大将を譲り受けるんだからなあ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「むしろこんにちお立ちになるほうが、ご得策だと思います。交通しゃ断がしかれるのは、あと数日を出ないうちでしょうから。」——「どうもありがとう。」とアッシェンバッハは言って
その場をつくろう二言三言を交した後、伝二郎はすぐに若い者に下知を下して、そこと思う壁のあたりをしゃ二無二切り崩しにかからせた。玄内は黙りこくって縁端から怪訝けげんそうにそれを見守っていた。
からくも、瀬田の大橋口は、しゃ二無二突破して、光春以下、その大軍のうちへ、面もふらず駈け入るまでの果敢かかんは示したが——到底
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あっちこっちへ眼を移さず、自分の商売を一生懸命にやる、決して決して商売換えをしない。しゃ二無二ひとつ物へ食い付いて行く。……と云うことでございますよ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蛇丸じゃまる——という名のとおりに、生き物のごとく自ら発して、しゃ二に襲いかかってくる壁辰の脇腹わきばらを、下から、つかまで肉に喰い込んで突き——上げたと見えた秒間、その紙一枚のような瞬刻しゅんこくだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
で、大野木山の関門や、そこらの城砦じょうさいには、藤吉郎の手勢を残して、信長の本軍は、しゃ二無二、敵方の本城地へ肉薄して来たものだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
純な乙女の恋心、宗三郎が道人の後を追い、名古屋へ行ったと知った時、浜路はしゃ二一人ででも、後を追おうと云い出した。仁右衛門一時は止めたものの、止めて止まりそうな様子ではない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
松明たいまつを振って追って来た人々の中に、安達清経あだちきよつねもいた。わが子の後を追って死のうとするしずかを抑えて、しゃ二連れ帰った。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしです! どうしても戦わんとなれば、この際、しゃ二無二、一夜か半日の間に、長篠城をおとしいれ、しかる後に、織田、徳川を迎えるべきでしょう
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老爺はしゃ二、彼を人なき所まで引っ張っていった。そしてさて、大きな吐息を一つあらためてほっとついた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——先駆さきがけてしゃ二無二、天王山にお味方の旗を立てた者こそ平野の一番首よりも、戦功第一のほまれたらん」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、わッさもッさを退けて、しゃ二、窓から屋根の外へ持ち出し、共にスルリと屋根上へ脱け出していた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとまたぞろ、三りょうの江州車を押してきた旅商人の一団が、しゃ二、人渦ひとうずの中へ割りこんでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禿久が、しゃ二、腕を引っぱると、虎之助は身をねじって、空いている左の手で、脇差わきざしを抜いた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しゃ二無二、本陣の将士を督して勝頼の身を、重囲から救い出した。——これを敵方から見れば、明らかに、甲州の中軍は、算をみだして、潰走かいそうし出したものといえよう。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天皇御自身は、お困りなのであるが、まわりの者が、天皇のお名をかざして、しゃ二、軍備をすすめている。じつに嘆かわしいことだと、愁訴しゅうそしているように読まれる。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御輿舁みこしかつぎの懸声かけごえをそろえて社を出るように、わっしわっしと、重厚な戦列を押し出していた。そしてはやくも、円明寺川の東岸の藪に迫り、しゃ二無二、敵の中へ駈け入った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帝と皇后の御輦みくるまは、李暹りせんのために、李司馬の軍営へと、しゃ二、曳きこまれて来たが、そこへお置きするのはさすがに不安なので李傕りかく、李暹の叔父甥は、相談のうえ、以前
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天龍てんりゅうを乗っきって、しゃ笠井かさいさとへあがったのも夢心地ゆめごこち、ふと気がつくと、その時はもう西遠江にしとおとうみ連峰れんぽうの背に、ゆうよのないがふかくしずんで、こく一刻、一ちょうそくごとに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宮路のとりでは、足守あしもりとよぶ小さい町の裏にあたる。足守の人家を横に見て、その山麓さんろくに近づいたのはもう夜だった。夜をかけてしゃ二道もない山を登りつめる。ここはかなり高地である。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かほどな堅塁けんるいが、さいごのねばりになって、こう急に敗れた原因は何かというと、寄手のしゃ二無二な土龍もぐら戦法が犠牲を無視して城中へ入ったのが、彼の致命を制したこと勿論だが、何よりは
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若侍たちは、日吉をらっして、しゃ二、籾蔵もみぐらの前の空地へ引っぱって来た。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、しゃ二、猛進をつづけ、ついに新野の街まで押し入ってしまった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五郎左は、前を駈ける信長の卯月をめがけて、しゃ二無二、せまって行った。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてしゃ二、今日中にはと、水陸から瀬田の敵をおめきつつんだ。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義元の帷幕いばくで、さかんにそうあざけり笑われていた時刻、その信長は、街道の小坂、相原村の中間から、太子たいしたけの道なき道をしゃ二無二越えて、もう義元の本陣へいくらもない地点まで来ていたのであった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しゃ二、実行力に燃える猪突邁進家ちょとつまいしんかなのである。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただしゃ二無二であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)