輿入こしい)” の例文
しかるに奥様は松平和泉守まつだいらいずみのかみさまからお輿入こしいれになりましたが、四五年ぜんにお逝去かくれになり、其のまえから居りましたのはおあきという側室めかけ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と云うのは女房のお菊というのは、富豪の商人の松倉屋などへ、輿入こしいれすることなど出来そうもない、貧しい町家の娘だそうだ。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
遠からずもうお輿入こしいれせねばなりませぬゆえ、いっそ思いきってと、あの預かり雛をお隠しあそばされたのだそうでござります。
大和からすぐ彼の父にとついだのでなく、幼少の頃大阪の色町へ売られ、そこからいったんしかるべき人の養女になって輿入こしいれをしたらしい。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一度は水戸みとの姫君さまのお輿入こしいれの時。一度は尾州の先の殿様が江戸でおくなりになって、その御遺骸ごいがいがこの街道を通った時。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あれみい。そなたが、この楠木家へ輿入こしいれの日に、実家さとから移し植えた柿苗も、はやあのような木になって、大きな実をつけ出している」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高安への輿入こしいれを承知しただけでも、自分の気持を相当ころしてきたに違いない、このうえ八束のことで辱しめられたら
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
父に対する告訴を取り下げた上に、唐沢家に対する債権を放棄してれるのなら荘田家へ輿入こしいれしてもいゝと云うのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼女は十八歳で輿入こしいれしてこのかた九年のあひだ、まだ一人の子もなかつた。それは一に彼女の病弱に帰せられてゐた。
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)
縁談は故障なく運んで、いよいよ今夜は嫁御の輿入こしいれというめでたい日の朝である。越智の屋敷の家来らは思いもよらない椿事ちんじにおどろかされた。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここの健康道場場長、田島医学博士その人のところに、お輿入こしいれあそばすのだ。僕はきょうマア坊からその事を聞いた。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
長州からお輿入こしいれになったとの事ですが、ただ美しいといっても、えんなのと違ってお品よく、見飽きないお姿でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
この日も秀林院様の仰せられ候は、日本国の女の智慧浅きは横文字の本を読まぬゆゑのよし、来世は必ず南蛮国の大名へお輿入こしいれなさるべしと存じ上げ候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
天正十一年になって、遠からず小田原おだわらへ二女督姫君とくひめぎみ輿入こしいれがあるために、浜松のやかたいそがしい中で、大阪にうつった羽柴家へ祝いの使が行くことになった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「親許は上野の山下で、もう結納ゆいのうのとりかわせも済んで、近々のうちにお輿入こしいれがあるそうじゃありませんか」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
保平が安房へ引込んだのが、朝霞が泰文のところへ輿入こしいれした直後だったことなどを思い合わせても、保平の側に相当な遺憾があったのではないかといわれている。
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
だから家に置いても格別させる用は無く、ただ将来の地位を安全にすることが主になると、さあさあ早くお連れ下さいと、里方からかえって輿入こしいれを急ぐようになる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そんな風評うわさみみにするわたくしとしては、これまでの修行場しゅぎょうば引越ひっこしとはちがって、なんとなくがかり……幾分いくぶん輿入こしいまえ花嫁はなよめさんの気持きもち、とったようなところがあるのでした。
そうしてお輿入こしいれの時にお道具の中に数えて下さいといって自作の鼓を一個さし上げた。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仲人は笹野新三郎の用人、小田島伝蔵おだじまでんぞう老人、いずれ春には輿入こしいれするはずで、ボツボツ支度を心掛けていた矢先ですから、貧しい調度ながら、一と通りのものは揃っております。
ねえさんがこの家へ輿入こしいれになった時、始めてこのはちを見て珍しい草だと思ったが、今でも故郷の姉を思うたびにはきっとこの池の竜舌蘭を思い出す。今思い出したのはこの鉢であった。
竜舌蘭 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ごく近くでは、光瑞氏夫人が九条家から十一歳の時に輿入こしいっているし、光瑞師の弟光明師には、夫人の妹がとつがれている。重縁ともなにとも、感情がこぐらかったら、なかなか面倒そうだ。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
昔は旧お旗下の令嬢にて、立派に輿入こしいれをされ、また清く元の身のままにて里へ帰され、そうして、また立派に大隈家へ貰われておでになった当時の事実を、知りながら黙っているより
それを、あなた、どなたか知らんが、まあ大変な誤解をなさったもんですよ。まるで、この物狂いの娘が、人もあろうにこの私の所にお輿入こしいりをするかのように云いふらしたのですからね。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
そっと輿入こしいれをして、そっと儀式を済ますはずであった。あながち金が惜しいばかりではない。一体が、目に立つように晴れ晴れしいことや、はなやかなことが、質素じみな新吉の性にわなかった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ひでよし公がこのお輿入こしいれのことをきゝおよばれ、かついえ公をえちぜんへかえさぬと仰っしゃって長浜へ御出陣あそばされ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そのほか、浅野家菩提所の寄進金と、亡君の内室瑤泉院ようぜいいん化粧料(輿入こしいれの折の持参金)とはべつに手をふれずにわけてある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母がこの高安たかやす輿入こしいれするとき、いっしょにつれて来て、もう二十余年になるし、身を寄せるところも無かった。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし、気になるのはお嬢さまの婚期でござりまするが、お約束のお輿入こしいれはいつごろのご予定なのでござります
「近いと言ってもこの甲府に近いところ、それはこれから三里ばかり離れた有野村というところの大金持のお家から、近いうちに殿様へお輿入こしいれがあるんですとさ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その秋にお種は利七のところへ輿入こしいれいたしましたが、陳はそれでも断念あきらめ兼ねたと見えまして、それから足掛三年唐人屋敷かんない居住いすんでおりましたが、さすがに気落らくたんして
間もなく輿入こしいれなさる新嫁さんのお荷物は、持って来てもらわぬようにとはいってはありますけれど、あちらはお家柄だから幾分の心構えはしなければというのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
細川家へお輿入こしいれ遊ばされ候以来、御夫婦御親子ごしんしのかたがたは格別に候へども、男の顔を御覧遊ばされ候は今日この少斎をはじめと致され候よし、後に霜より承り及び候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしはよう州の或る家の娘でございます。きょう他へ輿入こしいれをする筈で、昼間から家を
仲人は笹野新三郎の用人、小田島伝蔵おだじまでんぞう老人、いずれ春には輿入こしいれするはずで、ボツボツ支度を心掛けていた矢先ですから、貧しい調度ながら、一と通りのものは揃っております。
「大御所様二十番目の姫満千姫君まちひめぎみのお輿入こしいれについては、お噂ご存知でござろうな?」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこでこの縁談は整い、早速仕度をしてお輿入こしいれという段になって、目出たく婚儀は整いました。しかるに、これが意外にも不縁となってしまったのでありますが、これにはまた理由があった。
おいたちのことだの家庭のことだの輿入こしいれのときのことだのいろいろと事情を知っておりましたのでそのとき父に話したのでござりますが
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
細貝家へ輿入こしいれをして来て、化粧の間で支度を直していると、しゅうと八郎兵衛はちろべえしゅうとめのさち女がはいって来た。
やぶからし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お武家として、立派な事だ。でも、若い奴らは、がんとして意地張ったまま、岩公を渡さぬようだが、もう輿入こしいれも近いのに迷惑千万、あしたは、わしが若い者を
下頭橋由来 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
増屋の主人は、それを世間並の遠慮と思い込んで、反対し続けて来ましたが、最後には折れて出て、一応増屋の親戚の養女と披露し、それから改めて正式の輿入こしいれになりました。
鳥渡ちよつとお耳に入れました通り、小石川の伯母御様が御媒介で、どこやらの御屋敷から奥様がお輿入こしいれになるかも知れぬといふお噂、あけても暮れてもそればつかりが胸につかへて……。
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
……もしまたあなたが大旗本などの、一時養女ということになって、そこから北条家へ花嫁として、輿入こしいれなさるのをお望みならば、きっと私は父を説いて、許しを得るよういたします。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この美人に思われて夭死わかじにをしたのは、お輿入こしいれ間もないことで、その死因は単純な果報負けだともいうし、坂崎余党のうらみの毒によるものだともいうし……また、昼夜にもてあそばるる天樹院の
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
約束誓言を堅く守らせる意味から男雛おびなの親王さまを分け与え、古島家そのもののほうにはこれまた行く末先の女夫めおとを誓い、うれしい契りの日のよきお輿入こしいれを一日も早かれと待ち願う意味から
父の決心がきまりましたのはまったくこのお遊さんの言葉がありましたためでござりましてそれから間もなくおしずの輿入こしいれがござりました。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
山木家へ輿入こしいれの夜から今日まで、こういうふうに、事の運んで来たのも、よく考えると、わたくしの勇気というより、何だか、父の目企もくろんでいた通りの道を
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇女は疋田家へ輿入こしいれをした……良人おっとは愛してくれたけれども家格の相違に比例して生活の様式も違うし、そのうえ家士と小者を加えると八十人に余る家族なので
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
十月はじめに、双方の見合みあいも型のごとく済んで、この縁談はめでたくまとまった。但しお妻は十九の厄年であるので、輿入こしいれは来年の春として、年内に結納の取交せをすませることになった。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
池鰹鮒ちりう家の息女おえつかた、———後の松雪院しょうせついんは、河内介が多聞山の城に帰ってからまだ半年もたゝない永禄えいろく元年の三月に、桐生きりゅう家に輿入こしいれした。