軽々かろがろ)” の例文
旧字:輕々
茅萱ちがやの音や狐の声に耳をそばたてるのは愚かなこと,すこしでも人が踏んだような痕の見える草の間などをば軽々かろがろしく歩行あるかない。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
うかれ男 (故更に厳粛の貌を装ひ)や、それこそは邪法の内秘、吉利支丹きりしたん宗門の真言しんごん軽々かろがろしうは教へられぬ。したが白萩よく聞きや。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
駿河台の老婦人は、あわれ玉の輿こしに乗らせたまうべき御身分なるに、腕車くるまに一人のり軽々かろがろしさ、これを節倹しまつゆえと思うは非なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこかに大きな間違いがあるのだ。僕等の頭が揃いも揃って、少し変になっているのかも知れない。軽々かろがろしく騒ぎ立てることを慎まなければいけない」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
須永先生は短い口髯を指尖ゆびさきでもみながら静かに傾聴けいちょうされましたが、私の言葉が終ると、低い声で軽々かろがろと笑って
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あなたの重責……またかかえておられる沢山な家従郎党たちのかなしみやら運命のわかれをお考えになられたら、決して、この一歩は、軽々かろがろとここからは出られぬはずじゃ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ天よ地よ、すべてほろびよ。人と人とは永久とこしえに情の世界に相見ん。君よ、必ず永久とこしえの別れを軽々かろがろしく口にも筆にものぼしたまいそ。これ実にわれの耐うるところにあらず。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
電信柱でんしんばしらは、軽々かろがろみょうおとこげて、ひょいとかわら屋根やねうえろしました。みょうおとこは、ああなんともいえぬいい景色けしきだとよろこんで、屋根やねつたってはなしながらあるきました。
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よろいの胴に立て懸けたるわが盾を軽々かろがろと片手にげて、女の前に置きたるランスロットはいう。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
丈夫じょうぶづくりの薄禿うすっぱげの男ではあるが、その余念よねんのない顔付はおだやかな波をひたいたたえて、今は充分じゅうぶん世故せこけた身のもはや何事にも軽々かろがろしくは動かされぬというようなありさまを見せている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかしの名取に至っては、そのあえ軽々かろがろしく仮借せざる所であるらしい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
小川の家では折角下男に送らせようと言つて呉れたのを断つて、教へられた儘の線路伝ひ、手には洋杖ステツキの外に何も持たぬ背広扮装いでたち軽々かろがろしさ、画家の吉野は今しも唯一人好摩停車場ていしやぢやう辿たどり着いた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
薫り佳き桃金嬢もて飾り付け、さて軽々かろがろと私を空に連れ去つた
「出処進退というものは然う軽々かろがろしくめるものじゃない」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
冬のきである。小春こはると云えば名前を聞いてさえ熟柿じゅくしのようないい心持になる。ことに今年ことしはいつになく暖かなので袷羽織あわせばおり綿入わたいれ一枚のちさえ軽々かろがろとした快い感じを添える。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぜんから、貴女の御憐愍ごれんみんを願おうと思っていたんですけれど、島山さんのと違って、貴女には軽々かろがろしくお目にかかる事も出来ませんし、そうかと云って、打棄うっちゃって置けば、取返しのなりません一大事
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
信長の気もこよいは実に軽々かろがろと見うけられた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浮子うきよりももつと軽々かろがろ私は浪間に躍つてゐた