草枕くさまくら)” の例文
珠運しゅうんもとよりまずしきにはれても、加茂川かもがわの水柔らかなる所に生長おいたちはじめて野越え山越えのつらきを覚えし草枕くさまくら
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ひとゝせはせを翁奥羽あんぎやのかへり凍雲とううんをたづねて「薬欄やくらんにいづれの花を草枕くさまくら」と発句ほつくしければ
「いやなにもありません。行き当り飛蝗ばったとともに草枕くさまくら」と最前の浪花節の句をいってから笑いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
夏目先生の「草枕くさまくら」の主人公である、あの画家のような心の目をもった調律師になって、旅から旅へと日本国じゅうを回って歩いたらおもしろかろうと考えてみた事もある。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
……こがらしかれぬまへに、雪国ゆきぐにゆき不意ふいて、のまゝ焚附たきつけにもらずにのこつた、ふゆうちは、真白まつしろ寐床ねどこもぐつて、立身たちみでぬく/\とごしたあとを、草枕くさまくら寐込ねこんで
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いへにあればいひ草枕くさまくらたびにしあればしひる 〔巻二・一四二〕 有間皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
夏目先生の「草枕くさまくら」の一節を思い出させたのは、今でも歴々と覚えている。
樗牛の事 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家に在らば いもかむ 草枕くさまくら 旅にこやせる 旅人たびとあはれ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
草枕くさまくら旅行くきはみさへの神のいそひ守らさん孝子の車
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あはれとや月もとふらむ草枕くさまくらさびしき秋の袖の上の露
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
空の屋根、土をしとねの草枕くさまくら
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ひとゝせはせを翁奥羽あんぎやのかへり凍雲とううんをたづねて「薬欄やくらんにいづれの花を草枕くさまくら」と発句ほつくしければ
こひはまさかもかな草枕くさまくら多胡たこ入野いりぬのおくもかなしも 〔巻十四・三四〇三〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
たれ一人ひとりよこるなんど場席ばせきはない。花枕はなまくら草枕くさまくら旅枕たびまくら皮枕かはまくらたてよこに、硝子窓がらすまど押着おしつけたかたたるや、浮嚢うきぶくろ取外とりはづした柄杓ひしやくたぬもののごとく、をりからそとのどしやぶりに、宛然さながら人間にんげん海月くらげる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いづくより 来ませし仏か 敷島の 大和の国に いほりして 千年ちとせへにける けふ日まで 微笑ゑみたまふなり 床しくも 立ちたまふなり ほのぼのと 見とれてあれば 長き日に 思ひ積みこし うれひさり 安けくなりぬ 草枕くさまくら 旅のおもひぞ ふるさとの わぎに告げむ 青によし 奈良の都ゆ 玉づさの 文しおくらむ 朝戸出の 旅の門出に 送りこし わがみどりも 花咲ける 乙女とならば 友禅の 振袖ふりそで着せて 率ゐ行かむぞ このみ仏に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)