美形びけい)” の例文
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた官女くわんぢよよ、とちよ、三葉形みつばがたぬひを置いて、鳥の羽根はねの飾をした上衣うはぎひきずる官女くわんぢよよ、大柄おほがら權高けんだかで、無益むやく美形びけい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
踊りに妙を得し雪といふ美形びけい、唯今のお座敷にてお米のなります木はと至極あどけなき事は申とも、もとは此町ここ巻帯党まきおびづれにて花がるたの内職せしものなり
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
始の程は何者の美形びけいとも得知れざりしを、医員の中に例のくるしめられしがありて、名著なうて美人びじクリイムともらせしより、いとど人の耳を驚かし、目をよろこばす種とはなりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そのまた見物に出る美形びけいを見物しようというので、近くはもとより、江戸のあちこちから集まって来る老若男女の群れが自然と行列をつくって切れもなく流れ動いている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
目ざめるばかりの美形びけいがいち人、突如として正面お座席近くに姿をみせて、文字通り万緑叢中紅一点のあでやかさを添えましたので、いぶかしさに打たれながら主水之介も目をみはっていると
そのお久美と申しまするは、まだ二十歳はたちかそこらの美形びけいと承りましたが、世にも珍らしい不敵者で、この評判を承りまするとことほか気の毒がりまして、お相手のお名前はわたしが存じておりまする。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
驚き見れば長高たけたかき老紳士の目尻もあやしく、満枝の色香いろかに惑ひて、これは失敬、意外の麁相そそうをせるなりけり。彼は猶懲なほこりずまにこの目覚めざまし美形びけいの同伴をさへしばら目送もくそうせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
寝乱れ姿のしどけなく顔蒼ざめた様子も、名打なうての美形びけいだけあって物凄いくらい。死んだ主人とは三十近くも齢が違うわりに、未だかつて浮いた沙汰などついぞ世間に流れたことはなかった。
あは手向てむけはなに千ねんのちぎり萬年まんねんじやうをつくして、れにみさをはひとりずみ、あたら美形びけい月花つきはなにそむけて、何時いつぞともらずがほに、るや珠數じゆずかれては御佛みほとけ輪廻りんゑにまよひぬべし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おどりにみやうゆきといふ美形びけい唯今たゞいまのお座敷ざしきにておこめのなりますはと至極しごくあどけなきことまをすとも、もとは此所こゝ卷帶黨まきおびづれにてはながるたの内職ないしよくせしものなり、評判ひやうばん其頃そのころたかるもの日々ひゞうとければ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)