維持いじ)” の例文
わたくしおもうには、これだけのぜにつかうのなら、かたをさええれば、ここに二つの模範的もはんてき病院びょういん維持いじすることが出来できるとおもいます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
して、官吏くわんりまたは軍人ぐんじんにして、身分の體面を維持いじし、家の基礎きそを動かさぬだけの人間に仕上げやうと期してゐたのであツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
だから女なら女なり、馬鹿なら馬鹿なりに、その体面を維持いじして行きたいと思うんです。もしそれを毀損きそんされると……
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
諸君、吾人ごじんは内外多数の迫害はくがいえて、今日までビジテリアン同情派の主張を維持いじして来た。然もこれ未だ社会的に無力なる、各個人個人においてである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すなわち今の事態を維持いじして、門閥の妄想もうそうを払い、上士は下士に対してあたかも格式りきみの長座ちょうざさず、昔年のりきみは家を護り面目めんもくを保つのたてとなり
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
治安ちあん維持いじするとは、人の命を惜しみまもることではなく、人間の精神の自由をさえ、しばるというのか……。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
もし鎔融状ようゆうじようのまゝのものが地上ちじようちるさい、ある程度ていど冷却れいきやくしてゐたならば、空中旅行中くうちゆうりよこうちゆう回轉運動かいてんうんどうのためにつたかたち維持いじし、そのまゝ、つむがた鰹節形かつぶしがた皿形樣さらがたよう火山彈かざんだんとなり
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼はさっそく弟をよび、四名の釈放をあんすすめた。すると直義は、憤然とそれをこばんだ。——そんなことではこの占領下の、治安の維持いじはたもてぬと、つよく言い張るのであった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まち独立どくりつ立派りっぱ病院びょういん維持いじされようはいとか、とにかくわるいながらも病院びょういんのあるのはいよりもましであるとかと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
所謂いわゆる国家なるものを目的に定めてこれを維持いじ保存ほぞんせんとする者は、この主義にらざるはなし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これまたむを得ざる次第しだいなれども、かくに明治年間にこの文字を記して二氏を論評したる者ありといえば、またもって後世士人の風を維持いじすることもあらんか、拙筆せっぴつまた徒労とろうにあらざるなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これをれ知らずしてみずから心をなやますは、誤謬ごびゅうはなはだしき者というべし。故に有形なる身分の下落げらく昇進しょうしんに心を関せずして、無形なる士族固有の品行を維持いじせんこと、余輩の懇々こんこん企望きぼうするところなり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この人は幕府の末年に勝氏と意見をことにし、くまでも徳川の政府を維持いじせんとして力をつくし、政府の軍艦数艘すうそうひきいて箱館はこだて脱走だっそうし、西軍にこうして奮戦ふんせんしたれども、ついにきゅうして降参こうさんしたる者なり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)