竜宮りゅうぐう)” の例文
旧字:龍宮
博士のことばどおり、二人の目の前には美しい海の中の風景がくりひろげられ、まるで竜宮りゅうぐうに向かう浦島太郎のような気持になった。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「やれ、やれ、それはとんだことをしましたねえ。かんじんのぎもがなくっては、おまえさんを竜宮りゅうぐうれて行ってもしかたがない。」
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あなたが竜宮りゅうぐうへおでなさることは、かねてからお通信たよりがありましたので、こちらでもそれをたのしみにたいへんおちしていました。
この町のを遠くから見ながらくるときは、林太郎の目にはこの町がおとぎ話の竜宮りゅうぐうのように美しいところに思われたのでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「それは見ることは誰にでも出来ます。美しいと申して、竜宮りゅうぐう天上界てんじょうかいへ参らねば見られないのではござらんで、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは紛れもなく海神わたつみの宮の口女くちめであり、また猿のきもの昔話の竜宮りゅうぐう海月くらげであって、こういう者が出てこないと、やはり話にはなりにくかったのである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
隣の坊ちゃんを竜宮りゅうぐう小僧になぞらえて見る。ここでは坊ちゃんは海表かいひょうの世界から縁あって、鶴見に授けられたものとする。坊ちゃんは打出うちで小槌こづちを持って来る。
「浦島太郎」は一冊のうちとおばかりの挿絵を含んでいる。彼はまず浦島太郎の竜宮りゅうぐうを去るの図をいろどりはじめた。竜宮は緑の屋根瓦に赤い柱のある宮殿である。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかしながら、大阪のカフェーは旅の空か何かで訪問したらさぞ不思議な竜宮りゅうぐうだろう。和洋の令嬢と芸妓げいぎ乙姫おとひめのイミタシオンたちがわれわれをすぐに取り巻いてくれる。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
青い玉のようなものがぎらぎらとその周囲まわりに光っていた、それを見つけた時の俺の気もちと云うものはなかったよ、俺はなんだか五色ごしきの雲に包まれて、竜宮りゅうぐうへでも往って
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「陸の竜宮りゅうぐう」と呼ばれる日本劇場が経営困難で閉鎖されるということが新聞で報ぜられた。
藤棚の陰から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
地獄の半日は、竜宮りゅうぐうの百年千年。うで卵のげっぷばかり出て悲しさ限りなく
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
竜宮りゅうぐうの王様のおきさきになるんだね。自尊心の強いったらないね。困り者だ」
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
父様ととさま御帰りになった時はこうしてる者ぞと教えし御辞誼おじぎ仕様しようく覚えて、起居たちい動作ふるまいのしとやかさ、仕付しつけたとほめらるゝ日をまちて居るに、何処どこ竜宮りゅうぐうへ行かれて乙姫おとひめそばにでもらるゝ事ぞと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ニースって、竜宮りゅうぐうのようなところね。」
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さるさんはまだ竜宮りゅうぐうらないものだから、そんなことっていばっておいでだけれど、そんなことをいう人に一竜宮りゅうぐうせてげたいものだ。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
最後さいご玉手箱たまてばこはなし、あれも事実じじつではありませぬ。べつにこの竜宮りゅうぐうければむらさきけむりちのぼる、玉手箱たまてばこもうすようなものはありませぬ。
そうして見ていればいるほど、新吉しんきちはびっくりするものばかり見つけ出し、海のそこ竜宮りゅうぐうか、雲の上の天国か、自分はもうこの世の中にいるものとは思えなくなってしまいました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
竜宮りゅうぐうまでも是非にたずねて取返さん、とひどい決意を固めてしまった。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
猛雨と激流と深い山々と岩壁と雲の去来の中を走る船は竜宮りゅうぐう行きの乗合のりあいの如く、全くあたりの草木のしき形相と水だらけの世界は私に海底の心を起さしめた。ある旗亭きていでめしを食いつつ見おろした。
いくらばかにされても、くらげはどうすることもできないので、べそをかきながら、すごすご竜宮りゅうぐうかえっていきました。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『まァ竜宮りゅうぐうなどともうすものが実際じっさいこのにあるのでございますか。——あれは人間にんげん仮構事つくりごとではないでしょうか……。』
「やっぱり竜宮りゅうぐうみたいなところもあるなあ。」と感心かんしんしたりしました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
このはこの中にはいっているのは、竜宮りゅうぐうのふしぎな護符ごふです。これをっていれば、天地てんちのことも人間界にんげんかいのことものこらず目にるようにることができます。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)